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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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#1 身勝手なコンピューター

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「どうすればそんなことが」
「世の中ってこうだと思ってる当たり前のことが間違っていても、それに気付かなければ何の問題もないじゃないか」
「はい、でもコンピューターは一つでも計算が合わないと、エラーが出て先に進めない。だからこそ正確で、信頼がおけるんじゃないでしょうか」
「なら君は、その答えが正しいと思って、信用してるだけ?」
「そうじゃダメなんですか?」
「答えを出せるなら、その過程の計算は間違っていないと考えているだろ」
「はい。途中の計算によって結果が導き出されますから」
「では、すべて結果を決めてから逆算出来たら、未来を選べると思わないかい?」
「どういう意味かよく・・・」
「現実の世の中は結果があれば、たとえ計算なんか間違っていても、問題ないんだよ」
「すぐには納得出来そうにないです」
「量子物理学て言うのは、人類の固定概念をぶっ壊さないと理解出来ない学問なんだ」
「それは知っています。私はそれを3年生になったら専攻して学ぶつもりです」
「そうか。じゃ今日は基本中の基本を教えてあげよう」

 睦美は教授の居る机に近寄って、手に持っていた電子基板を、その上に返した。
「今までの物理の法則は、大体証明され尽くしていて、新しい理論はほとんど生まれてこないんだ。これじゃもう、新しい発明を期待出来ない」
「そうですね。既存の技術の延長線上にしか、未来はないってことですね」
睦美の表情に力が戻った。
「そうそう。解って来たね。例えば証明されていない物理現象でも、観測して事実だって分かっていることもある。アインシュタインの相対性理論なんて、そんなのばっかりだ。それは結果が解ってるだけでもいいってことだ」
飛鳥山は笑いながら椅子に腰かけた。

「でも観測結果なんて本当に正確かどうか、分かったもんじゃない」
「その観測機器の性能次第ですね」
「そうじゃないんだ。観測機器は正確なもんだ。現代の集積回路のたまものだから」
「それじゃ間違うはずはない、ということですか?」