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左端から見れば全部右寄り Part-6

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「うん、そうだね」
「ところが二回目は八月に開かれたんだ」
「どうして? 一番暑い季節じゃない?」
「それはね、アメリカでは野球とフットボール、バスケットボールの人気が高くてね、野球シーズンが終わる頃フットボールが始まり、フットボールが終わる頃バスケットボールが始まる、一番重ならなくて注目度も低いのが長い野球シーズンの半ば頃、八月なんだよ」
「え~? アメリカのテレビ局の都合でオリンピックの時期が決まるの?」
「信じられないかもしれないけど本当なんだ、オリンピックにはお金がかかるからテレビ局から入るお金は重要だったんだよ」
「日本で八月にマラソンやトライアスロンやるとか考えられないなぁ」
「そうだね」
「だったらお金をなるべくかけないで、テレビ局の影響を減らせば良かったのに……」
「そうすると国の宣伝にはならないし、そもそも開催地に選ばれないんだ」
「オリンピックがなくなっちゃった理由、わかるな」
「でもね、なくなるには決定的なことがあったんだ、コロナ禍って知ってるだろう?」
「うん、学校で習った」
「丁度コロナ禍が始まった2020年に二度目の東京オリンピックがあるはずだったんだ」
「え~? それはさすがに無理だよね」
「そう、一年延期したけどコロナ禍は収まらない、日本ではもうオリンピックは中止にすべきじゃないかって声が高まったんだ」
「それはそうだよね」
「で、IOCに『この状況では無理です』って言ったんだ」
「あ……でも東京オリンピックは二度開催されたんだよね……」
「そう、日本が中止したいって申し入れたら、IOCは『それなら違約金を払え』って言って来たんだ」
「イヤクキンって?」
「つまり約束を守れなかった罰金だな」
「え~? だって日本のせいで出来ないんじゃないじゃない、コロナ禍なんて誰も予想できなかったんだから仕方ないと思うけど」
「IOCはね、もうアメリカのテレビ局からお金を貰っちゃってたからね、オリンピックをやってくれないと困る状況にあったんだよ」
「そうか……テレビ局の言いなりだもんね」
「そうなんだ、で、中止することも出来ず、東京オリンピックは無観客で開かれた」
「入場料、もらえないよね」
「そう、日本人はオリンピックを観戦することが出来ないのに、アメリカのテレビ局が中継するためにオリンピックをやったみたいな感じだな、もちろん日本のテレビ局も放送したけどね」
「大赤字だったんじゃない?」
「その通りだよ、しかもその頃コロナの変異株が流行し始めてね、東京の感染者数は一気に増えたんだ」
「酷いなぁ……」
「しかも日本のテレビ局はね、オリンピックが始まる直前まで中止すべきだって言ってたくせに、競技が始まると競って中継して視聴率を稼ぎ、終わると感染者数が増えたのはオリンピックをやったせいだと言い出す始末さ」
「めちゃくちゃだね」
「そうだね、酷いものさ」
「でも……テレビ局ってそんなに力あったの? 今じゃあんまりテレビ見る人はいないけど……」
「その頃はまだ多かったんだよ、テレビ局ってスポンサーからお金を貰って番組を作るだろう? スポンサーはコマーシャルを流して商品の宣伝をしたり、流行を作り出して儲けたりしてたんだ、それにテレビ局の上の方の人たちには左寄りの考え方の人が多くてね」
「どうして?」
「1960年代に学生運動って言うのが盛んでね」
「それも習ったよ」
「そうか、知っていれば話が早いよ、お前がもし大きな会社の社長さんだったら、学生運動で火焔瓶投げていたような人を雇おうと思うかい?」
「絶対に思わない」
「そうだよな、その頃だってそうさ、でもマスコミは違った、政治を批判するのも仕事の一つだからね」
「政治が暴走しないようにでしょ?」
「そう、それは大切な役目だね、だけどそもそも中立の立場から物事を考えていないから、政府のやることには何でも反対したけどね」
「でもさ、1960年代に学生だった人って、2020年まで働いてる?」
「もちろん退職してるさ、でもね、どうしたって自分に近い考え方の後輩を取り立てるだろ? テレビ局で出世するには左寄りじゃないとダメだったんだ」
「そうかぁ……」
「広告代理店もそこに一役買ってるんだけどね、それを話すと長くなるからそれは今度にしよう」
「うん」
「ま、とにもかくにも東京オリンピックは開催されて、観客はいなくても競技はちゃんと行われて、施設や運営、それにスタッフの心遣い、外国から来た選手や関係者たちはすごく満足して帰って行ったんだ」
「東京オリンピックは成功したんだね?」
「その通りさ、でもね、それが面白くない人たちもいたんだ」
「誰?」
「次の冬季オリンピックを開催することになっていた国さ、自分たちがコロナ禍でのオリンピックを成功させて『人類がコロナに打ち勝った証を示した』と宣言したかったんだな、でも東京オリンピックが成功したんでそうは言えなくなっちゃったんだ、そもそもコロナウィルスってその国から発生したものだったし、細菌兵器として人工的に作り出したウィルスじゃないかとも言われていたから余計に『コロナに打ち勝った』と言いたかったんだな、それだけじゃない、その国はある民族を根絶やしにしようとしているという噂もあってね、いや、噂だけじゃないな、かなり信憑性のある証拠も揃ってた、もちろんその国はそれを否定していたけどね、そんな中で『平和の祭典』を成功させることは大きな意味があったんだ」
「その国って、どこだか大体想像がつくよ」
「ま、言わぬが花だな……東京もオリンピックと変異したウィルスの流行が重なって悩まされたけど、何とか克服したんだ、だけどその国ではそう上手くは行かなかった、テレビに映されたり訪れた外国人の目に触れるところは綺麗に取り繕っていたけど、一歩裏通りに入れば悲惨な状態だったんだ、でも政府はその事実を隠した」
「そんなの隠しきれないでしょ?」
「そうだね、その頃はもう誰もがスマホを持っている時代になっていたからね、で、実態が漏れ出して政府が市民に強い圧力をかけて隠していたことがバレたんだ、どうなる?」
「隠したことで余計に疑われるよね」
「そうさ、それを見た次の夏のオリンピックの開催地、パリの市民も震え上がった、パリがあんなことになったら大変だってね、で、IOCに中止を求めたら……」
「東京では罰金だって言ったよね」
「そう、やっぱり同じことを言ったんだけど、ヨーロッパは地続きだろう? フランスだけじゃなくて、フランスと国境を接する国々も『そんなのおかしい』と言い出してね、IOC委員の中にもヨーロッパ人は沢山いるし、そもそも会長もフランスと国境を接するドイツ人だったからね、拒絶ばかりしていられなくなったんだ、」
「IOCは困っただろうね」