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左端から見れば全部右寄り Part-6

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「それがそうでもないんだ、IOCはもしオリンピックが中止になった時のことを考えて保険に入っていたからね、それがあるから『中止もやむを得ないか』って方に傾いていたんだ、でもね、パリの次の開催地はロスアンゼルスに決まっていたんだけど、そのロスアンゼルスからも念を押されたんだ『もしコロナ禍が収まらなかったら、ウチも中止にしていいんだな?』ってね、でもね、パリで保険金を受け取ったら、二回続けてロスアンゼルス大会でもって言うわけにも行かない、保険会社だってそんな契約は結ばないからね、しかもアメリカで行われる大会だから放映権料もいつもよりずっと高く吹っ掛けていたんだ、仕方がないからパリに『やっぱり中止なら違約金を払え』って言ったもんだから、ヨーロッパ中が『それなら開催されてもボイコットする』と言い出したんだ、アメリカも同じでね、『コロナ禍でも違約金を取るような組織とは付き合えない、ロスアンゼルスでも同じことを言うつもりならアメリカもボイコットする』ってね、日本もボイコットに賛成したよ、だって東京の時はふんぞり返っていたくせにパリやロスアンゼルスに問い詰められると右往左往してるんだからね」
「そうだそうだ」
「そもそも、それまでも国と国との関係でボイコットはあったけど、今度はIOCのせいでボイコット騒ぎになったんだ、IOCが存在する意味がないだろう? パリだってヨーロッパの国々やアメリカが参加しない大会なんか開きたくないよね、『これでも中止なら違約金か?』って迫ったものだから、IOCは困り果てて会長は辞任したんだけど、次の会長のなり手がいない、委員も次々と辞めて行く……何しろ自分が火の粉を被ってまでIOCに残ろうなんて委員はほとんどいなかったんだ、そんなわけでIOCは解散、オリンピックもなくなったってわけだよ、わかったかな?」
「うん、よくわかった」
「最初に近代オリンピックが開かれたのは1896年だから、124年にわたって続けられて来たんだ、その間には二度の大戦もあったし、パンデミックもあった、それでも続いていたのはそれだけの魅力があったからだろうね、サッカーのワールドカップも盛り上がるけどオリンピックはそれ以上だからね、でもそれだけ続いていれば歪みも出て来るものさ。 最初のうち、出場できるのはアマチュア選手だけだった、だけどアマチュアでオリンピックに出られるくらいに競技に打ち込めるのは貴族や富豪だけ、それはおかしいと言うことでプロの参加も認められるようになったけど、今度は競技力の格差が広がって行った、それでも拡大を続けていたオリンピックは徐々にお金がかかり過ぎる大会になって、このままじゃ拙いと商業主義を受け入れたらそれに振り回されるようになった、それだけじゃない、ドーピングと言ってね、薬で筋力を強くしたり、スタミナをつけたり、身体の成長を止めたりすることまで行われたんだ、オリンピックがなくなってしまったのは、規模が大きくなりすぎたこともあるけど、それにつれて『国の威信をかけて』みたいなエゴも大きくなって行ったからなんだ、それに加えてIOCの貴族体質がコロナ化で浮き彫りになった、オリンピックはその使命を終えて弊害ばかりが目立つようになっていたから、なくなってしまっても仕方なかったろうね」
「でも、いっぺん見てみたかったな、オリンピック」
「そうだね、出来ることなら復活して欲しいとおじいちゃんも思うよ、でもね、本当に平等で平和な世界にならないと、オリンピックのような大きな祭典は利用されてしまうだろうね、オリンピックが再開される時、それは真の意味での世界平和が訪れた時だろうね……」