短編集81(過去作品)
今までの富松は損な役回りが多かったのは、二つの選択肢に対し考えすぎて、好機を逸していたのが大きな原因だと思っている。しかし考えずに行動して後悔するのも嫌だ。
高価なものを買う時にはあまり躊躇しないが、中途半端な値段のものを買う時は一時間でも二時間でも迷ってしまうことがある。要は価値観の違いなのだろうが、高いものを買う時には、最初から計画を立てて買いに行くか、専門家である店員の話を聞いて選んでいるので迷いがない。しかし、中途半端な値段のものは店員に聞くよりも自分の目を信じているので、きっといろいろな品物を目の前にして、いざとなると自分の目が信じられなくなるのだろう。いや、目移りする性格を熟知していて、それでもどうしようもないと思っているのだ。
いつも目の前に分岐店があり、その前で佇んでいるように思える。右側の奥に見えるのはおねえさん、そして左側は啓子さん。いつも同じ側にいるのだ。その時に自分がどちらを愛していたかで道を決めるのだが、それがいつも損な役回りを選んでしまう結果になっている。
「今度こそ」
今日はどちらを選ぶのだろう。運命の神様しか知らないことだった……。
( 完 )
作品名:短編集81(過去作品) 作家名:森本晃次