ヤクザ、VRゲームにハマる!
もし陰謀が本当なら、どんな有力証拠ももみ消されてしまうだろう。裁判やるくらいなら、逃げた方がマシだろう
私もこの国から出て遠くに行きたい。
「その前に手錠をどうにかしないと!」
鍵なら私が隠し持っている。ポケットの裏にポケットがあり二重構造になってる。
彼女は鍵を渡したい気持ちはある。だがためらっている
この国では拘束を解けばその時点から死刑囚扱いになる法律である。
鍵を渡すくらいなら、交換条件として、私も連れていってくれ
彼女にとっては、日本は忌まわしい記憶のある場所で、日本にいる限り怨みに囚われて幸せにはなれない。
事情を話せば理解してもらえるだろうか、
裏切らないと信じてもらえるだろうか
彼女は寺井たちに過去の出来事を語り、そして鍵を渡した。
「じゃあ、二人とも、しばらくお別れだな」
「永遠に帰れない、かもしれませんが」
「……」
寺井たちはコンテナに入った。
寺井たちには大型船の積み荷として扱われ二週間海上で生活する。コンテナの中は六畳程の広さがあり、トイレなどは使い捨ての簡易トイレと消臭剤とを回数分密閉する容器に入れて現地に到着後、捨てる
寺井たちは発電機をコンテナにいれたので、懐中電灯は必要ない。テレビと漫画とDVDで二週間の航海を耐え忍ぶつもり
お菓子や乾パン等の保存食が食事のメインになるのが、この旅で1番キツイ
------------------------- 第23部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
ナギ視点
【本文】
ナギは準更生人種として社会から隔離され。一般とは違う教育を受けている
準更生人種とは犯罪を正当化する集団の中で育った子供達を示し。厚生のチャンスを与えて人権を尊重することを目的としている。
少年法とはと区別されて、主に
まだ罪を犯していない者が 準更生人種に該当する
ナギは今、第一期生の準更生人種として、入学式に参加している。学園は海上に浮かぶ海上自衛鑑の中にある。
入学者はナギの他に30人いて、皆ヤクザを親に持っている
基本的な生活ルールは人権を考慮され、特別偏った内容のものではない。
衣食住は保証され、ある程度の娯楽もある。外の世界とも監視付きだがVR越して繋がる事ができる。
偏っているのは授業で、学習内容は主に道徳である。国際政治情勢とそれに関する歴史を道徳的視点から学んでいくことに重点が置かれている。
卒業資格の基準は未定であり、担当教員の裁量に任されている。
ナギは授業を終え、宿題を済ましたのち、気晴らしにVRに繋げた。
監視員がゲームを監視してる。
ナギは盗聴とかそういうのに詳しくないので寺井宛にメッセージを送ってしまった。寺井がログインしてしまうと、通信ログから、寺井が何処に潜伏しているのか特定されてしまう状況になった。
ナギは国外にいる元キャバ譲と良くゲームをしている。今回も一緒にパーティーを組んで、モンスター狩りに出かけた
------------------------- 第24部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
寺井の幼児退行
【本文】
寺井は日本では指名手配され、生活はままならなくなった。カネが底をつく前に国外に出ることにした。
平井組は以前、麻薬密売容疑をかけられて警察に追れる身となった元キャバ嬢を国外に逃亡させた。元キャバ嬢は新しい戸籍を与えられて、南米チリにある東の国アルゼンチンに隠された。海からは離れているから、物流コストはかかるし、国土の殆どは標高が高く険しい山々に囲まれていて、遊ぶところは無いし、住むには快適とは言えない場所である。
しかしアルゼンチンの政府は良所もあって、国土柄経済力がなくカネに困っているから買収しやすい。新たな戸籍を作るには、うってつけの場所であり、また険しい山々が来る者を拒むから、逃亡者が潜伏するのに最適である。寺井も逃亡先にアルゼンチンを選んだのだが、現地住民との英会話に四苦八苦していた。
「英語の通訳くらい雇えば良かった」
指名手配され、急いで逃亡してきたので、まとまったカネがなかった寺井。寺井は今、元キャバ嬢の住所に行こうとしているのだが、バスの時刻表の見方がわからない。とても困っている。
身振り手振りと、住所のメモを見せての人頼み神頼みで、どうにか、たどり着くことができた。
寺井がキャバ嬢を頼ったのは、恋愛的に好きだからとか嫌いだからとかでなく、麻薬の稼ぎで、それなりの蓄えがあることを知っていたからで
VR友達だからである。
キャバ嬢の家についた寺井
ノックをするが返事がない。
玄関の鍵は閉まってるが、家の中から気配がする。家の周囲をぐるりと周り、空いている窓を見つけた。
「ごめんくださ〜い」
家の中を覗いて見た寺井
キャバ嬢が裸で、股間に手を掛けウンウン唸ってた。
必死なので
寺井の存在に気付いていない。
そるおそる
そろりそろり
玄関まで戻った寺井
今度は大声で叫んだ。
「ごめんくださーい」
「あ、はいーい、ちょっと待ってくださーい」
服を着るので時間が掛かっているキャバ嬢、ついでに護身用に斧も持ってきた。
玄関先
「どちら様ですか? って、寺井さん? どうしてこんなところに……」
寺井は事情を話した
キャバ嬢は、まあ、身から出たサビだから。仕方が無いよ
という顔をして、
「住むなら仕事を探してください」と言ってきた
「その前に一回VRをさせて欲しい」
寺井は確認したいことがあった。今日本で寺井がどういう扱われ方をして、どういうニュースが広まっているのかを
Wikipediaに寺井の情報が掲載されていた
寺井は
平井組を率いて親組である山口組を乗っ取ろうと戦争を仕掛けた。銃撃戦の末、双方に多数の死者をだした。逃亡中、山中にて民家人を人質にして2名を殺害、人を殺して楽しむ動画を撮影して、組員に配るなど、常軌を逸する性格の持ち主。世紀の大悪党
他は組員に関する噂話や、組の設立関する経緯やらで、殆どが噂で占められている
メディアでは、連日、寺井の指名手配写真が報道され、懸賞金がかけられ、街中では寺井を探すハンター集団も現れている。
しかし、これを政府の陰謀だと解釈した記事も小さくだがネットに書き込まれている。書いているのは、人権擁護派のボランティア団体で……
寺井はこれまでスルーしてきたが
ゲーム内でもボランティア団体がいて、政府の陰謀説を唱えゲームの危険性を周知していた。
その頃は深くは考えなかったが、ダイ・ハードな思いもしたし、今は政府の陰謀説を完全に信じきっていた。
寺井はボランティア団体にコンタクトを取ろうと思ったが、躊躇した
アルゼンチンからのアクセス通信の記録が、残るのではと。
寺井を擁護してくれそうな団体にアルゼンチンからのお客様がくるなんて常識的には有り得ない。 政府が気付けば、真っ先に寺井の居場所が判ってしまう
そもそも、日本語サイトにアクセスするアルゼンチン人なんて居ないはずだ。
作品名:ヤクザ、VRゲームにハマる! 作家名:西中