粧説帝国銀行事件
「どうすんの」マサは続ける。「その記事読んで、どれだけの人があなたを信じると思うの。誰があなたの絵を買うと思うの。吊るされなくても、あなた、自分で首を吊るしかないんじゃない?」
「うーん」
とまた唸った。なるほどな、と思うしかない。釈放されたら自由だと考えるのは甘かったようだ。絵が高値で売れるものと考えたのも甘かったようだ。あの弁護士どもはダメだ。いずれ再び警察が来て逮捕され、今度こそ死刑台行きになるかもしれない。ここにいたら引きずり出され、木に吊るされてしまうかもしれない。そうでなくてもおしまいで、自分で首を吊るしかないとは……。
「どうすんの」
とまたマサが言った。「どうしようかな」と平沢は応えた。
それから言った。「逃げるしかないか」