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粧説帝国銀行事件

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「毒を使えば人が死ぬのがわかりそうなもんだろ、どんな素人でもさ。鞄一杯の金のために人をあんなに殺すなんて」
 
「だからそれは戦中に……」
 
「それはわかるが、もう小平の頃と違うぞ。それにどうして荏原じゃ誰も死ななかった?」
 
「係長が言うように予行とか、何万も殺す計画と思うんですか」
 
「そうは言わねえよ。中井の件はあの人が言う〈銀行員でも信用させて薬を飲ませられるかを見る実験〉って話と合わない」
 
「でしょ? そこで拒まれたのになんで本番をやるのかという話になると思いますよね」
 
「そうだが、だからなんで昨日にまたやったと言ってるんだよ」
 
「いや、それは……」
 
「わからねえだろ。だからなんにもまだわからねーつってるんだ」
 
被害額は計算中でそもそも金を盗られたかどうかもまだわかっていないのだ。額によっては話がまったく変わってくるかもしれないと思う。
 
古橋は歩きながら、「なあマギちゃん」
 
「なんですか」
 
「昨日、リュウがどうとか言ったよな」
 
「え? 『二銭銅貨』ですか」
 
「それだ。ホシは何をゲンジョウに残して、どうやってたどるんだ」
 
「って、あれは小説の話ですよ」
 
「いいから言えよ」
 
「うーん……いいや、だからあの話はそこはデタラメなんですよ。本を読まずに話だけ聞いても参考にならないと思うけど」
 
「そうなのか」
 
「ナナさんが言いたいのはこのホシのことでしょ。残してますよね、ふたつの未遂で名刺を二枚」
 
「それだ。どう思う? そっからたどってけるかな」
 
「さて」
 
と言った。それからまた、
 
「無理なんじゃないですか」
作品名:粧説帝国銀行事件 作家名:島田信之