小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

粧説帝国銀行事件

INDEX|29ページ/47ページ|

次のページ前のページ
 

父はバッグの口を開けて中が見えるようにした。鶏卵大の黒い玉ころがギッシリと詰められている。
 
「それ、全部タドンなの? またずいぶんな量ね」
 
「ソレワナンデスカ?」
 
とエリー。父は、
 
「タドンだ。今その炬燵に入れるところを見せてやろう」
 
「やめてよお父さん」
 
「何を言ってる。これだけあるんだ。ケチケチしないで四つくらい……」
 
母が、「ふたつで充分でしょう」
 
「四つだ」
 
「ふたつで充分よ」
 
「わからない女だな。この平沢大璋が四つと言ったら四つなんだ」
 
「何がヒラサワタイショウよ」
 
「まあ見とけって。すぐにもあの家、また工事を始めさせてやるからな。拾萬圓の絵を描く仕事が入ったんだ」
 
「またいつもの法螺が始まる」
 
「今度は本当だ」
 
言って炬燵の布団をめくり、中の火皿を取り出した。熱を放って赤く光る炭団(たどん)がいくつか納まっている。
 
それが炭の粉を固めて燃料としたものなのはエリーも見てすぐわかったようだ。父が火玉を補給して皿を炬燵に戻すのを興味深そうに眺めていた。
作品名:粧説帝国銀行事件 作家名:島田信之