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島田信之
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粧説帝国銀行事件
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アンヌ
群衆が去った後の庭は惨憺たる有様だった。生垣は木が何本も幹をヘシ折られ倒されて、枝や葉が散らばっている。鉢が割られた盆栽や砕けたサボテンがいくつもいくつも。家の主人は茫然としてそんな庭を眺めていたが、その彼に、飼い犬にして番犬のアンヌがきゅんきゅんと鳴き声をあげて近づいていった。
「おおよしよし。アンヌ、大丈夫だったかい」
彼は言って、雌犬の頭を撫でてやった。横で彼の妻もまた、
「怖かったろう。でも大丈夫。もう大丈夫よ」
作品名:
粧説帝国銀行事件
作家名:
島田信之