205号室にいる 探偵奇談23
階段から、廊下へ。ゆっくりゆっくりと。音は近づいてくる。
カン カン カン
(ハイヒール…女…)
潤の脳裏に、音を鳴らすイメージが鮮明に沸いてくる。ドッドッドと心臓が痛いくらいに鳴っている。その音は、205号室の前で止まった。そこから、音が聞こえない。
「なになになに」
「部屋の前にいるよな…」
「シッ」
三人は闇の中でじっと沈黙する。汗が背中を伝うのがわかる。緊張感がピークに達しようとしたそのとき。
ビーッ
音が室内に響き渡り、三人はびくりと体を震わせた。たぶん、チャイムを鳴らしているのだ。
ビーッ
二回目。それきり音は鳴らない。
(やばいやばい…)
侵入していることがばれているのだろうか。もしも見つかったらなんて言い訳をしよう。潤は恐怖とパニックの中で考えを巡らせる。幸い三人とも面を被っているから、飛び出してダッシュで逃げられるかもしれない。相手が女ならたぶん逃げられる。
ギィー…ッ
扉を開ける不快な音が、耳から心臓に抜けていく。入ってきた…。
作品名:205号室にいる 探偵奇談23 作家名:ひなた眞白