205号室にいる 探偵奇談23
「うっわ、これやば…!」
色あせた様々なスナップ写真だ。鮮明なもの、かすれてよく見えないもの、様々だった。気持ちが悪いのは、その写真の中の一人だけが顔を黒く塗りつぶされていること。どの写真の中にも、その黒く塗りつぶされた人物が映っている。
「きっも…!」
「これはやばいわ…」
ちょっとした騒ぎになり、じわじわと恐怖が侵食してくるのがわかった。だがこれはおいしい絵面ではないか。公園、海、結婚式、会食、和室。様々な楽しい場面を切り抜いた写真なのに、悪意を持って塗りつぶされている人物がいる…。
「ちょ、静かに…」
和多田が潤の腕を掴んだ。しん、と静まり返る。
カン カン カン カン
甲高い音が聞こえる。
鉄製の階段を、何か尖ったもので叩くような音が、ゆっくりと緩慢とした一定のリズムで聞こえる。
「足音…」
「あの階段上る音じゃねえ?」
誰かが、上ってきている?静かにパニックが広がる。
「ここ立ち入り禁止じゃん…」
「俺らが入ったとこ見られてたのかも」
まずい、こんなところに侵入していたことがばれたら大変なことになる。
三人はかびくさい押入れに入り、襖を閉めて息を殺した。
作品名:205号室にいる 探偵奇談23 作家名:ひなた眞白