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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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205号室にいる 探偵奇談23

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伊吹と別れたその足で、瑞は一人、鎌田らが侵入したというアパートの前に来ていた。すっかり日は落ちて、周囲にも空き地にもひとけはない。

「知らなくていいんだ。伊吹先輩は」

規制線を抜け、古くさび付いた階段を上る。205号室の前に立つ。花瓶に活けられた花と、種類も色もバラバラな靴が三足、無造作に落ちている。中にいて、今も何かを待ち続けているであろう「彼女」に向けて、瑞は静かに語り掛ける。

「俺は霊媒師じゃないから、あなたを成仏だの浄化だのする気はないんだ」

静まり返った室内からは、何の音も聞こえない。

「あなたを咎めたいわけでもない。あなたが連れて行った人達のこともどうでもいいし」

ただ、と瑞は目を閉じた。

「誰ももう、あなたの死を弄んだりしないようにしたいだけ。ごめんね。たぶん、当分は静かになると思う」

鎌田らの一件があるから、ここに悪ふざけで近づくやつはもういないだろう。
供えられている花も、ペットボトルも、菓子も、まだ新しい。彼女の死を悼んでいるひとがいるのだ。鎌田らは、そういったひとたちの思いも踏みにじったことになる。瑞は屈みこみ、そこで静かに手を合わせて瞑目した。

助けを求めるような微かな声が聞こえた気がしたが、きっと風だろう。
瑞は立ち上がり、アパートを後にする。




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