205号室にいる 探偵奇談23
…が、来たんだ… 逃げ…アパート…もう…
耳をこらす。不穏な気配に、潤は息を呑んだ。かろうじて聞き取れた言葉は。
――205号室にいる
通話は切れた。掛けなおすがつながらない。
「…どうなってるんだ?和多田はあのアパートに行ってるのか?」
「悪ふざけ?昨日の続き撮ってるとか?」
そんなわけない、と潤は語気を強めた。昨日彼は、花瓶を蹴とばしたことを気に病んではいなかったか…。罪悪感めいたものを抱え、もう一度あそこに行っているとしたら放ってはおけない。
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作品名:205号室にいる 探偵奇談23 作家名:ひなた眞白