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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 後編

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その夜は、社務所に寝かせた瑞の隣で、伊吹もまた眠りについた。彼が無事に帰ってきたことや、今日までの心労が消えたことが重なり、伊吹は泥のように眠った。

夢もみない深い眠り。いつもなら、こういうとき必ず会いに来てくれていたはずなのに。深い眠りは「彼」の訪れがない証拠なのだ。

だから明け方、誰かが枕元に座っているのに気づいて目覚めたとき、もうこれが最後の邂逅なのだと伊吹にはわかった。会いに来るのを相当躊躇したことも。

まだ薄暗い夜の中、弛緩した四肢のだるさと、心地よい眠気の中。伊吹は枕元の彼に夢うつつで声を掛けた。

「…行くのか」

気配が静かに動くのが分かった。伊吹は目を閉じたまま、その懐かしいような気配を追う。

「…うん。隣でグースカ寝てるそいつが、全部に決着を付けてくれた。おまえと生きる方の世界を選んで、こちらを断ち切る決断をしてくれた」
「そっか…」

伊吹は瑞の物語のすべてを知っているわけではない。それでも、いろいろなことを断ち切るために感情をかき乱されてつらかったことはわかる。それ相応の出来事であり、自分たちを取り巻く今日までの因縁の、一区切りなのだと思う。

「いつかおまえは忘れるだろうけど、それでいい」

彼は、どこか満足げに言うのだった。
もう二度と、今度こそ二度と会えないのだな。そう思うのに、以前の様に悲しくはないのだった。
最後にもう一度、その姿を見たいと強烈に思ったのだが、すべてを終わらせて戻って来た瑞のことを思うと、伊吹は出来なかった。瑞はすべてを断ち切って帰ってきた。

(だから俺も、もうここで手放すんだ…)

その覚悟で、伊吹は目閉じたまま別れることを選んだ。