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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 後編

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名残惜しそうにとどまっていた気配が、徐々に薄くなることがわかった。

「…つらいことや苦しいことがあっても、おまえの命は本当に価値があるもので、たくさんの人を救ってきた尊いものだ」

最後の言葉だった。

「生きてくれ。おまえが生きることで、俺達もずっと生きていける。幸せに、なって」

それきり、もう何の気配も感じられなくなった。それでも伊吹は布団の端を握って目を開けたいのに耐えた。最後の言葉を刻み込み、自分の中に落とし込み、もう大丈夫、大丈夫、と押しつぶされそうになる寂しさを胸の中に閉じ込めて、それからようやく目を開けるまで、時間を要した。

薄闇の中には、誰の姿もない。隣の布団で、瑞は体を丸めて子どものように眠っている。布団を掛けなおしてやるために体を起こした伊吹は、自分の枕元に季節外れの光がぽつんと灯っているのを見た。それは本当に小さくて、儚い光…。

「これ、蛍だ…」

淡いグリーンが明滅し、生きていることを知らせる。指先を差し出すと、静かに登ってくる。指先に灯ったその光は、瑞と伊吹がかつていた世界の夏の名残だった。

その名残は夜明けとともに命の灯を失っていたが、儚い光は伊吹の中にいつまでも灯っている。胸の奥の深い深い場所で。生きている限り、いつでも灯り続ける命の灯。





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