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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 後編

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「やめてよ!そんなことされたら、俺…!」

差し出された穂積の手を両手で精一杯握って、押し返す。涙が溢れるのを見られないように俯いた。抗いがたい懐かしさに、心が悲鳴をあげている。

取り戻した記憶の一部は、もう違う世界の出来事ではない。
自分の感じた、経験したこととして、胸の奥にじわじわとしみ出してくる。

このひとは、俺の、命よりも大切な人だった。
このひとと、生きることが出来れば、何を捨てても構わなかった。


だけど、帰らなくちゃ。待っているひとがいる。
俺が、それを選んだのだから。望んだのだから。


「…すまない、冗談だよ」

穂積はそう言ったが。もしかしたら、半ば本気だったのかもしれない。だってこの幸福は、瑞だけのものではない。この人もまた、悲しみと、後悔とともに手放したかもしれない光景だから。

でも、だからこそ、この手をとるわけにはいかないのだ。

「この手を離すのが、私の最期のお役目だ。瑞」

そっと手が離される。

「…お行き。どうか幸せに」

夜が明ける。眩しい陽光が差し込んでくる。新しい日が始まる。ここからまた、始まる。



「…ありがとう、」



瑞の呟きは、光の中に消え去った。いつかの自分がいた、もう一つの歴史の中へ。








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