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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 後編

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朝が来る



どれくらいそうしていただろう。自分の心のさざなみが静かにおさまると、瑞はようやく目を開けた。童子が、少し心配そうにこちらを見ているのが、なんだか意外でおかしかった。

「何だ」
「いや…ありがとう、って思って」

涙を拭って立ち上がる。きつい神様に慰めてもらえるとは思っても見なかった。その驚きが通じてしまったのか、童子はむっと怒ったように眉根を寄せた。

「なにか言いたそうだがな」
「え、そんなことないよ…ただ、俺けっこう嫌われてたから、ここの神様達に。あんなふうに言ってもらえるなんて、少しびっくりして…」

ふん、と不機嫌そうに鼻を鳴らしてから、童子は夜空を仰いだ。

「…いつかの日、ぬしに説教されてから、われらも少々考えを変えただけのこと」
「え?それってどういう…」
「もうよかろうが!ぬしのような自分勝手なやつを嫌っておるのは今も同じじゃ!世の理をなんと心得る!」
「ご、ごめんなさい…」

やっぱり怒られた…。

「ではな、瑞。私たちもそろそろ行くよ。夜が明ける」

穂積が言い、夕島の亡骸を抱えた紫暮と視線を交わす。
そうか。ここは、いつまでもいていい場所じゃない…。

「…もう会えないんですね」
「ああ」

せっかく自分の魂のルーツを知れたのに。だけど、これ以上を望むのは摂理に反する。大体この人達のそばには、この人達の「瑞」がいて、自分はここにいていい存在ではない。

でも。

「二度と会えないけど…忘れなくてもいいですか…?」
「うん…?」
「あなた達が、俺の大切な人だったこと。夕島がいたこと。自分がここに来るまでに、たくさんの人が幸福を祈ってくれたこと…覚えていても、いい?」

子ども染みた瑞の思いを、穂積は笑わなかった。柔らかな視線を向けたまま、静かに頷いてくれる。

「いずれ記憶は薄れていき、なかったことになった世界の中に、この時の光景も消えていくだろう。だが…そこに抗いたいのならそうすればいい」