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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 前編

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「うん…つらい」

今度は彼女を失うことになるのか…。これまでも死とともに、そのとき大切にしていた人とも別れを余儀なくされた。家族、友人、恋人…。

「つらいよ、もう終わらせたい…」

あと何度?もう、やめてくれ。生きることはもういいんだ。もう生まれたくないんだ。静かに死なせてほしいんだ。それだけなんだ。

「…大丈夫?」

覗き込んできた彼女の髪の匂いに、一瞬思考が消えそうになる。何もかも投げ出して、ただ死を待つだけならばまだよかったのに。だけど決して消えない憎しみが、夕島にそれを許さない。

その感情からは、どうしても逃れられない…。今まで死んだ幾多の自分の分が上乗せされて、身動きがとれないのだ。

「…つらいなら、もう頑張らなくていいんだよ」
「え?」
「あたし、中学のときいじめられてたでしょ?親は学校行け、高校受験どうすんのって、そればっかりだった。でもね、おじいちゃんが言ってくれたんだ。つらいのに頑張らなくていいよって。たった一度しかない人生を、命を、つらいことの為に擦り減らすなって」

たった一度しかない、人生。

その言葉を認識した途端、胸が石を飲んだかのように詰まって、夕島は呻いた。

「柊也くん?どうしたの」
「たった一度だから…大切で尊いんだ…」

どんな人にも、一度きりで、一つしかないもの。やり直しのきかないもの。何にも代えられないもの。

「俺の命に価値なんてない。使い捨てなんだ…」

大切に大切に守る物のはずなのだ。一人に一つずつ与えられている宝物。俺だけが違う。それを与えられるたびに絶望する。

使い捨ての割り箸と一緒だ。それを後生ありがたがる者はいない。役目が終われば捨てられる。