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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 前編

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限りあるもの



目が覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。

「柊也、あんたいつまで寝てるのよ。休みだからって。もう昼よ」

見知らぬ女が部屋に入ってくる。ああ、これが「今の俺の母」か。夕島は生返事をして起き上がった。

「梨絵ちゃんが来てるわよ。着替えてらっしゃい。女の子を待たせないの」

夕島は見知らぬ部屋で見知らぬ女性に言われたように、見知らぬクローゼットから見知らぬ服に着替えた。

こうして幾度も「夕島柊也」として生きる。死んだのち間もなく。以前の「夕島柊也」とは別の「夕島柊也」として、別の家庭に生まれた、別の人生を生きる「夕島柊也」になる。いや、「なっている」。以前の「夕島柊也」のことは誰も覚えていない。誰も知らない。別の人生がそこから始まって、また唐突に終わって。それをずっと繰り返している。

ただ、いつからか記憶は連続するようになった。死ぬまでのスパンは短くなっていて、もう「前回」を惜しんで泣いたり苦しんだりすることはなくなった。それでも、瑞への憎しみだけは澱のように心に溜まり、淀み続けている…。

こんなこと、いつまで続くのだろう。考えることにも飽いた。

玄関へ行くと、そこに少女が立っていた。同じ歳の頃の。梨絵、だっけ。化粧気のない地味な少女は、そう、幼馴染でいいのか。記憶は上手にいまの「夕島柊也」を演じられるよう刷り込まれている。

「なんだ梨絵。休みの日に」
「柊也くん、忘れてる。今日付き合ってくれるっていったじゃない」

なんだっけ。梨絵は子犬を抱いている。

「あ、犬の散歩だっけ。飼い始めたばっかりのバカ犬で、ちっともいうこと聞かないから手伝えって言ってたな」
「バカ犬ってひどいよ」
「ちゃんと躾けないからだろ」