響くがままに、未来 探偵奇談22 前編
「…夕島に言われた。おまえはもっと苦しめって…俺が苦しみぬいて死ねば、あいつは満足なのかな…」
それは違う。穂積は、静かだが強い口調で言い切った。
「瑞、おまえの罪はもう一つだってない。紫暮くんと見て来ただろう?おまえも同じく、欲に溺れた私たちの祖先の犠牲者なんだ」
利用され、殺され、喰われ。その先でまた長く長く使役され…。
「おまえが苦しみぬいて死ぬようなことは、私たちも伊吹も、どんなことがあっても受け入れられん」
優しい声が、カエルの合唱に溶けていく。いつかの夏の風景の中で、こうしてこの人と言葉を、心を交わしたことがある。瑞の心の奥深くで、誰かがそう感じているのがわかった。
「夕島柊也の魂を、ここへ呼ぶ」
「え?」
「わたしはそういったことを仕事にしていたのだ。彼の思いを聞こうじゃないか」
冷えた、あの微笑みが浮かぶ。正直、彼と対峙するのは怖い。だけど。
「…わかりました」
穂積が立ち上がり、柏手を打った。その途端、夜の光景は一変し、辺りは暗闇に包まれた。
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作品名:響くがままに、未来 探偵奇談22 前編 作家名:ひなた眞白