響くがままに、未来 探偵奇談22 前編
「転生の準備、順序、法則、そういったものをすべて無視し、彼は繰り返し蘇ってくる。瑞と伊吹の、すぐ近くで」
生ぬるい風が吹いた。
「そういう法則から外れる要素が一つでもあれば、繰り返しを変えられるかもしれない。例えば、一度でも、彼の死を止められれば…法則は変わるやもしれん」
死を止める…。
「彼の死は、どんなものだった?何か共通することはないか」
紫暮に尋ねられる。図書館で調べた記事、伊吹が立ち会った幾多の最期…それらを一つずつ思いだしながら、瑞は答えた。
「事故、殺人、災害…そういった、凄惨なものばかりだったとしか…」
残酷だ。死に方を選ぶことも、彼には出来なかった…。
「つまり死は突然のこと、予測も出来ないなら、止めようもない。そういうことになる」
紫暮が言った。
「そんな…」
穂積の提示した可能性がなくなれば、もう絶望的ではないか。瑞は項垂れた。だめなのか、運命は変わらないのか。
座り込んだ瑞の隣に、穂積もまた屈みこむ。
「…瑞、」
作品名:響くがままに、未来 探偵奇談22 前編 作家名:ひなた眞白