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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 前編

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…伊吹に会いたい
…伊吹!
…もう一度やり直したい、伊吹がいる世界でなくては意味がない!

「…おまえは願いを叶えてもらい幸福になるはずだった。しかし一片の悔い…伊吹くんへの執着が、記憶の一部を残したままで世界をなかったことにして巻き戻してしまった。いつの時代に生きても、おまえは伊吹くんを求めた。その果てが、いまここにあるすべてだ」

転生の繰り返し。ようやく出会えた伊吹との世界。罪悪感の正体。天狗が語っていた物語と、紫暮の話が繋がる。

瑞は水鏡を覗き込んだ。そうだ…伊吹と、そして、穂積。

神末穂積。

「ほ、づみ」

その名前を口にした途端、どっと頭の中に記憶が押し寄せる。はっきりとした映像ではなく、砂嵐のように荒れた画像。その中にはっきりと色づく、一枚の光景。自分の記憶ではない。誰かの記憶を盗み見ている感覚。

「…ああ、わかる。あいつの記憶だ」

伊吹の前に幾度も姿を現したという、いつかの「瑞」の記憶。
水鏡に手をのばす、しびれる様に冷たい水が、指先に触れた。波紋が静かに広がる。

「名前を、もらったんだ」

瑞、その名前は穂積がくれた。

「穂積」

水鏡に映る自分の背に、夏の夜が広がった。そこは田舎の田んぼ道。立ち上がり、振り返る。紫暮の隣に、あの老人が立っていた。

「あなたが…お役目様…」