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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 前編

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「…神末家の長男は、おまえを使役して強大な力を振るい、代々お役目様と呼ばれた」

そうだ。その力の源流は、自分と、そして「妹」。自分の中には存在していないはずの記憶が、じわじわと染み込むように溢れてくる。

「そんなおまえを、人としてもう一度生き直させてくれたのが、穂積様だ。人間らしい感情を与え、失う痛みや、人の優しさを教えてくれたのが伊吹くん。二人は最後のお役目様だった。裏切られ、物のように扱われ、一度は闇に堕ちたおまえを引き上げ、人間としての感情を与え、愛してくれた二人」

ふわりと胸の奥が温かくなる。その名前を耳にするだけで。魂が記憶している。二人にもらった、無限の優しさを。

「二人は…俺の願いを叶えてくれたんだ…」
「そう。殺されることもなく、食われることもなく、ただの人として妹と生きたいっていう瑞の願い。それを叶えたら、神末家が出来ることもない。穂積様や伊吹くんが生まれることもない。俺達が出会うこともない、まったく別の世界を生きられる。だけどそれは、かけがえのないものと引き換えだった。おまえと交わした言葉、温かな思い出…俺達はそれと引き換えにおまえの願いを叶えた。つらかったよ。でも、おまえが大事だったから、かわいそうだったから、誰もがそのつらさを飲み込んで、おまえとおまえとの思い出を手放した。それを寂しいと思うことも二度とない…そんな世界が始まったはずだったんだ」

だけど、と紫暮は泉に視線を落とす。水面から、静かな泣き声が聞こえてくる。

…嫌だ
…こんなはずじゃなかった
…伊吹に会いたい
…忘れることなんて出来ない
…捨て去ることなんて出来ない