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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 前編

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「ただし瑞一人で、だ。ここに入り生還できる保証はない」
「えっ…」

隣の伊吹が動揺したように瑞を見た。

「この中は我らの懐でもあるが…この世とあの世の境目でもある。だが、この世とあの世というものが一つきりでないことは、もうぬしらも知っているだろう。幾度もやり直しを繰り返して分岐した数だけ、世界というものが存在している。迷子にならぬよう、せいぜい気を付けることだな」

本当に行くのか、と伊吹が腕を引く。

「行きます。俺は夕島を助けたい」

迷いはなかった。

「神域はすなわち、現世とは異なる場。失った物も、見つかるやもしれぬ。しかし神の懐は、一度は呪われたぬしの魂には毒でもあることを忘れるでないぞ」

童子は言った。

「水鏡に映す自らの魂の中に、その者を探すがいい。颯馬よ」
「はーい」

颯馬は入り口を塞ぐしめ縄を外した。

「ここで待ってるからね、瑞くん」
「…瑞、気を付けていけ」
「うん」

伊吹を安心させるため笑顔を見せたが、瑞は自分の膝が震えているのがわかった。この先に何が待っていて、自分がどうなってしまうのかを思うと恐ろしかった。しかし、もうこれしかない。

「先輩、俺、全部終わったら、聞いてほしい話があるんです」

話、と伊吹が聞き返す。

「俺の、好きなひとの話です」

やっと自覚した彼女への思いをどう育てたらいいのか、この人に聞いてみたい。