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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 前編

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神域へ



沓薙山はざわめいている。まだ夕刻には早いというのに、参道には誰もいない。いつもは人がいても、ひっそりと静謐な静けさをたたえている山が、囁くようにざわめいているのが瑞にはわかった。


き た な      

   ま た あ い つ だ …    

      
見られている…。たくさんの視線。しかし気にしている場合ではない。颯馬が物凄い速さで登って行くのだから。目指すのは、本殿の裏手の、あの洞窟。すべてを映し出す泉があるという沓薙山の神域だ。


「遅い」


辿り着いた三人を迎えたのは、幼い少年だった。神様と呼ぶにはあまりに粗末な風貌だった。淡い色の単衣(ひとえ)に草履をひっかけている。それなのに、その視線は心の奥を見透かすように澄み渡っていて、膝が崩れそうなほどの見えない威光が壁のように背後に控えているのがわかる。狐とは違う、強烈な存在感を放っている。瑞は委縮して動けない。これが、白虹童子か。
不機嫌で不遜な態度の少年に近づき、颯馬が頭を下げる。

「童子様、」
「ぬしらの願いは知っておる。ここに入りたいと申すのだな」

お見通しですか、と颯馬は苦笑している。

「われら全員の総意だ。須丸瑞の魂を巡る一連の転生に関わり、こちら側に多大なる影響を及ぼす魂を救済したいというぬしらの願いのために、ここへ入ることを許す」

童子は上目遣いで瑞を見た。睨みつけるような強い視線だった。