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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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最後の鍵を開く者 探偵奇談21

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伊吹は突然放たれた言葉に既視感を覚えた。これは、そうだ。転校してきた瑞からも、言われた覚えがある。

「この頃、そんな既視感を覚えるんだよ」

言葉を紡ぐ紫暮自身が、戸惑っているのがわかる。
均衡が崩れるんだ、と伊吹は直感した。

いつだったか天狗に言われた。別の場所にいた自分達の記憶や因縁を自覚してしまったことが、「こちら」にいろいろな影響を及ぼすと。紫暮もおそらく、瑞を取り巻く転生に深く関わっている魂なのかもしれない。

(…天狗が、言ってた通りだ)

自分達の身勝手な行いが、今まさに、自分たちの足元を揺るがせているのだ。紫暮の中にも、「いつか」の記憶が混じっている。
絶句している伊吹に、紫暮は慌てて詫びた。

「すまない、おかしなことを聞いたね」
「いえ…でも、あの、既視感って?」

うん、と紫暮は人参を切る手を止め、しばらくじっと口を噤んでいた。

「この頃不思議な夢を見るんだ。こういう、非科学的なことって今まで信じていなかったんだけど、すごく気になるんだ」

紫暮が遠くを見つめたまま、続ける。

「瑞は俺の弟ではなくて…すごく奇妙な友人なんだ。君と力を合わせて、何とかして瑞を…救おうとして…。あれ、どうだったかな、目覚めると思いだせないんだけど、とにかく瑞を助けるために奔走している。悩んで苦しんで、ものすごく後悔することがわかっているのに、助けようとしている」

瑞を救うため…。

(それは…いつかの「瑞」との話だ…)

「繰り返し、見るんだ。ここじゃないどこかで、瑞や、君と、家族とも後輩とも違う関わりをもっていた夢を」

そこまで話して、紫暮は伊吹の方を見た。