最後の鍵を開く者 探偵奇談21
夕島柊也の魂は、瑞と伊吹の物語に「巻きこまれ」、生と死を繰り返している。どの世界でも夕島は死ぬ役目を負っているのだ。幸福を奪われ続ける夕島の憎悪もまた、力を伴い顕現している。元凶たる瑞への恐ろしいまでの執着とともに。
「ごめんなさい…」
肩を震わせて瑞が言う。これまで、どんなときにも強気だった彼が。天狗にさえ突っかかり、自らの運命は自分で決めると言い切った瑞が。
いつかの自分の身勝手さを、責めている。
「…自分だけを責めなくていいんだ」
伊吹はその肩を叩く。瑞にここまでさせたのは、かつての自分にも責任があるはずだ。だから、どんなことも二人で向き合っていくべきだ。そう伝えると、瑞はようやく顔を上げた。
「一緒に、考えていこう」
少し眠れと言い添えると、彼は横たわり、じっと目を閉じるのだった。
作品名:最後の鍵を開く者 探偵奇談21 作家名:ひなた眞白