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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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最後の鍵を開く者 探偵奇談21

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揺らぐ均衡



発熱した翌朝、伊吹より少し後に目覚めた瑞の熱は下がっていり、翌日の夕方には起き上がれるくらいに回復していた。それを見届け、伊吹はようやくホッとする。

「ほら」

伊吹はあの魔除けの鈴を、瑞に手渡す。ベッドに半身を起こした彼は、それを受け取るとすがるように胸に抱いた。

「先輩、ありがとう」

夕島に奪われた加護の一部が、ようやく瑞のもとに戻った。これで、今は安心だろう。俺だけじゃないよ、と伊吹は言う。

「たぶん颯馬も、もう一人のおまえも助けてくれたんだ」

夢の中で、颯馬の声を聞いた。そして夕島のもとまで導いてくれたのは、もう一人の、瑞。もう消えたはずだったのに、今回の騒動で再び伊吹らの前に姿を現した、「なかったことにした世界」から来た瑞だ…。

「…夢の中で俺も聞きました。先輩と夕島の会話も、もう一人の俺の言葉も」

瑞は、生気のない表情を膝に埋めて声を震わせた。

「やっと…報われたと思ったのに、駄目だったんだ…。天狗の言ったことは、全部正しかった…」

幾度も生まれ変われるほどの力を持っていた瑞の魂は、長く監視され、その存在とこれまでの行いを咎められてきた。それでも生きたいと願う気持ちを、伊吹とともに貫き通しているのだが、その報いがいま、自分達に返ってきている…。

「俺はいろんなひとを不幸にして、苦しませて、ここにいるのか…」