最後の鍵を開く者 探偵奇談21
歯切れの悪いその返事は、郁が今まさに抱えている不安と同調する。何が、とははっきりとはわからない胸騒ぎを、颯馬も抱えている。それは全く根拠もなくてデタラメな直感なのだけれど、颯馬もまた同じように感じているのなら…やはり何かあるのかもしれない。
「い、行きたい…!行く!」
郁は殆ど反射的に答えていた。
『ほんと?じゃあ駅で待ち合わせよ』
「わかった」
何か、焦っている風な颯馬の行動に、郁は不安を隠せない。だが早く会いたいのは同じだ。
待ち合わせ時間を確認したのち電話を切った。
(準備しなきゃ…お金とスマホがあればいいよね…特急って幾らくらいかかるんだっけ?てか、須丸くんちなんてどこかわかんないけど大丈夫かな。颯馬くんは知ってるのかな)
考えていても始まらない。慌てて準備をすすめる郁の背後で、瑞からの返事がないままスマホは沈黙したままだった。
因果の糸は、瑞と「それ」の意思により、郁の指先にも掛かろうとしていた。
,
作品名:最後の鍵を開く者 探偵奇談21 作家名:ひなた眞白