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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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最後の鍵を開く者 探偵奇談21

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静まり返るリビングで、郁は胸を押さえる。

「……ひゃあ!」

突如手の中でスマホが震え、思わず声をあげてしまった。天谷颯馬(あまたにそうま)からの着信だった。

「颯馬くん?」
『こんばんは。ごめんね郁ちゃん、突然』

颯馬とは微妙な距離を保ちつつ、友達関係を続けている。郁に気があることを隠そうともしない彼には大いに戸惑わされることもある。軽い男なのだが、その内面に触れたことのある郁は、颯馬がある種の信念に基づいて行動していることもよくわかっている。だからこそ、いろいろな場面で行動をともにするくらいには心を許しているのだが。

「大丈夫だけど、どうしたの、急に電話なんて」

明日暇、と唐突に尋ねられる。いつもの、余裕のある口ぶりではない。穏やかな口調だが、ほんの少し焦りが伺える。

「明日?何も予定はないけど…」
『あのさ、一緒に瑞くんのとこ行かない?』

え?

「それって京都に行くってこと?どうして?」
『いや、ちょっといろいろあって』
「…やだ、なにいろいろって」

昨年。祭りの夜に消えてしまった瑞のことが思い出される。あのときの不安が蘇ってきて、胸が苦しくなる。瑞が不可思議な事件に巻き込まれるのは常なのだが、あの時は本当に心配したのだ。また同じようなことが起きているのだとしたら、郁は居ても立っても居られない。

『うーん。ちょっと心配なだけ。元気かなって…』