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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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最後の鍵を開く者 探偵奇談21

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夢でしか会えない存在だが、伊吹にとっては現世の瑞と同じくらいに大きな存在だった。本当は、こうして会うことすらもう許されないのだが、緊急事態に付き、天狗が特別に許したらしい。

「紫暮さんも、いつかの記憶を思い出してきてるみたいだ。おまえはあの人とも縁があった?」

腐れ縁だな、と瑞が苦笑する。その表情は言葉とは裏腹に優しく、嬉しそうだった。

「深い縁だよ。そっちでは俺と兄弟とは笑えるな。しかも兄貴って…。俺が絶対逆らえないようにっていう、紫暮の意地悪だと思う」

きっと絆が深く仲も良かったのだろうなと思わせる柔らかい口調だった。

「…俺は紫暮にも、つらい別れを強いたから。あいつがいま幸せだといいな」
「…大丈夫だよ。弟の瑞のこと大事にしてるよ」

きっと、幸せだと思う。あの家族を見ていれば、信じられる。

「俺が、夢の中とはいえおまえに接触していることも影響して、向こう側が少しずつ侵食してきているのだろうな」

このままは、よくない。瑞はそう続ける。一刻も早く夕島のことを解決し、今度こそ綺麗に消えてしまわなくては、と。

「瑞が言うんだ。夕島に許されるなら、自分は命を絶ってもいいって…」

あの悲壮な決意を、伊吹は絶対に認めるわけにはいかない。けれど、そこまでしないと夕島の無念が晴らせないこともわかっている。どうしていいか、もうわからないのだ。どうあっても、大切なものを失うことになるのかもしれない。

「耐えらんないよ俺…」

颯馬と瑞の前ではこらえていたけれど、感情が溢れて止まらない。これが報いなのか。「いつか」ではなく未来を選んだことは、間違っていたのだろうか。そんなこと、思いたくない。自分の生きて来たこれまでと、かつて生きていた時間が、そこで関わった人々の選択が、意味のないものだったなんて、考えたくない。