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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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最後の鍵を開く者 探偵奇談21

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「…いろいろあったでしょ、去年から」
「うん?」

郁が、少し声のトーンを落として話し始める。

「お祭りの夜、伊吹先輩と消えちゃったりとか…」

それで今回、詳しくは語らない颯馬がえらく瑞と伊吹を案じていたので、心配して京都までやってきたのだと言う。ありがとう、と瑞は重ねて礼を言う。失いたくないという思いが強くなる。今の生活を、自分を取り巻くこの日常を、大切な人達を、絶対に失いたくない。

「…あの、あたし、須丸くんにお願いがあるんだけど」
「うん?なに?」

郁はええと、としばし逡巡したのちに切り出した。

「前髪、切って欲しいんだ…」

え、と瑞は言葉を失う。彼女の髪を軽率に切ってしまったことを、ずっと後悔していた。

「あ、駄目ならいいんだけど!」

黙してしまった瑞に、郁が慌てたように言う。駄目じゃない。そうじゃなくて。

「いいの、俺で」
「須丸くんがいいの!」

強く言い放ってから、郁ははっとしたように顔を逸らして、「だって上手だから!」と付け足す。やばい。瑞は両手で顔を隠すように口を覆った。いまのはちょっとやばい。焦る。