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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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最後の鍵を開く者 探偵奇談21

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二人の約束



旅の疲れからか、颯馬はあっという間に眠ってしまった。思えば、伊吹と颯馬と布団を並べて眠るのは二度目だ。前回も調査の際にこんなふうに眠ったっけ。奇妙なものだ。縁と言うのは。混じり合うことが必然だったのだと、今はそう思える。颯馬の存在が、瑞と伊吹の因果を辿るために欠かせなかったことが、遠い遠いいつかから決まっていたのだと。

伊吹も静かに寝息をたてており、眠れない瑞は寝返りを打って縁側の向こうを見た。

紫がかった新月の夜だ。虫の声と木々のざわめき、山鳩の声。眠れない夜は、それらがいつもよりも色濃い存在感を放ってくる。

(駄目だ、寝れん)

瑞は布団を抜け出し台所へ向かう。水でも飲もうと廊下を歩くと、離れた座敷の襖が開き、誰か出て来た。

「…須丸くん?」

暗がりに小さな声。郁だった。絢世とともに床についた郁だが、彼女もまた眠れないのか、瑞の姿を見つけると、ホッとしたように笑う気配が伝わった。

「眠れないのか?」
「うん…まだちょっと緊張してるのかも」

知らない場所で眠るのは、落ち着かないのだろう。

「颯馬は三秒で寝たよ」
「颯馬くんらしいね」

二人で庭に出ると、満天の星空が広がっている。庭石に腰を下ろして、二人で星空を見上げた。

「すごいね。あたしの家からは、こんなに星見えない」
「冬はもっと綺麗だよ」

他愛もない話。しかし瑞は、郁の声に癒される自分を自覚していた。