最後の鍵を開く者 探偵奇談21
何の話、と郁は不安そうな表情を浮かべている。
「鈴が戻ったなら、しばらくは心配ないはずだけど、ちょっと対策考えないとだね」
詳しいことは向こうに戻ったら、と郁の前であることを気遣ってかそう言うに留めた。瑞も伊吹も、颯馬に聞きたいことが山ほどある。
「よかった、別に何もなくて」
郁も、何らかの異変を感じ取ってここへ来たのだろうか。京都行きが決まった経緯を知らない瑞は、心底安堵したというような郁の表情の意味も気になる。
「そんなこと言わずに泊まっていきなさいな」
お茶を運んできた来た紫暮が、すぐにお暇しますという二人を引き留めた。
「よくわからないけど、瑞の為に来てくれたんでしょう?」
「いいのセンセ!やったあ~」
「駄目だよ颯馬くん!御迷惑千万じゃん!いいんです、すぐ帰りますから!」
無邪気に喜ぶ颯馬と恐縮しまくる郁に、紫暮が笑って見せる。
「弟に会いに来てくれた子たちを、トンボ返りさせるわけにはいかないよ。今日はゆっくりして、明日帰ればいい。男ばっかの家に一之瀬さんを泊めるわけにもいかないが、もうすぐ絢世も戻るから」
その申し出を受け入れ、二人はお世話になりますと頭を下げるのだった。
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作品名:最後の鍵を開く者 探偵奇談21 作家名:ひなた眞白