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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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最後の鍵を開く者 探偵奇談21

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彼の者



伊吹のおかげで鈴が戻ったからだろうか。昨夜はおかしな夢を見ることも、夕島の気配を感じることもなかった。まだ薄暗い早朝に目を覚ました瑞は、隣の布団で熟睡している伊吹を見て安堵する。この二日間は、彼もまた気を張りっぱなしだったはずだ。ゆっくり眠らせてあげたい。

改めて、とんだ帰省になってしまったと伊吹に申し訳なく思う。本当は、京都をいろいろ案内してあげたかったし、進路や部活の話をもっともっとしたかった、伊吹は紫暮に進路の相談もあれこれしたかっただろうに。自分のトラブルに巻き込んで、連休は残り二日となってしまった。

「おはよう。早いな」

階下に降りると階下では紫暮がすでに起きており、新聞を広げている。

「…おはよ。父さん達は」
「明日には戻るそうだ。結局叔父さんのぎっくり腰も大したことないらしい」

叔父が怪我をしたとかで両親と姉は慌てて様子を見に隣県まで出て行ったらしいのだが、ぎっくり腰程度で済む怪我だったらしい。

「伊吹くんはゆっくり寝かしてあげよう。昨日もその前の晩も、おまえの看病で疲れてる」

言われんくてもわかっとるわい!と噛みつきたくなるのを抑え、はい、と小さな声で素直に答えておく。今回のことはすべて瑞が発端になっているのだ。

(でも…二人で考えようって言ってくれたから、もっと頼ってもいいのかな)

瑞は椅子に腰かけ、肘をついて窓のそとを眺めた。日が昇り始めた山際が、きらきらと輝いている。こんな不安、一人で抱えきれるものではない。伊吹がいなければ、瑞は夕島に対抗できるものなど一つだって持っていないのだから。

(…そうか。夕島は、一人なのか)

瑞は気づく。