小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

最後の鍵を開く者 探偵奇談21

INDEX|11ページ/27ページ|

次のページ前のページ
 


…何一つ失いたくない。
そう強く言い聞かせても、憎しみしかない夕島のことを考えると、瑞は考える力を失っていくように、気持ちがしぼんでいくのだ。郁に返事を返せないまま、スマホを机に戻す。

「瑞?ご飯だけど食べられるか?」

ノックの音と一緒に、扉から伊吹が顔を覗かせる。笑っていた。それを見て、少しだけ力が戻ってくる。何一つ失いたくない。失えない。この日常を手放す日がいつか来るのだろうか。それだけは。

「…この匂い、きんぴら?」
「そう。俺と紫暮さんで作ったんだ」
「やった、俺大好物」

他愛ない日々でいい。一つも特別なことなどなくていいのだ。
一緒に笑って、泣いて、生きるだけ。それを望んで、瑞はここにいる。


だが瑞が望むそれは、夕島もまた同じだったはずだ。
そしてそれを奪ってきたのは、ほかでもない瑞自身。








.