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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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最後の鍵を開く者 探偵奇談21

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開け放つ窓から、夕飯のいい匂いが漂ってくる。

(腹減った…)

今日は丸一日横になって過ごしていたから、腹の虫が鳴いている。こんなときにも腹は減るのだ。生きているのだなと、瑞はそんなことを考える。

ベッドから身体を起こすと、机の上に放ってあったスマホのランプがチカチカと光っている。メッセージが届いていた。

「一之瀬…」

郁からだ…。

『先輩も須丸くんも元気?』

まるで瑞の不調を察したかのようなタイミングだ。彼女はよほどの用事でもないと連絡をしてこないので、これは珍しかった。単純な、安否を確認するだけのメッセージ。そのメッセージを見つめていると、胸が少しずつ温かくなっていく。



―そっちに戻ったら一番に、一之瀬に会いたいな…



瑞の心に、そんな言葉が浮かんでくる。
しかしそんなことを伝える資格も、自分にはないのだ。本当は夕島の白黒世界で会った彼女のように、自分の至らなさに呆れられているのかもしれない。

「…」

瑞を、そして伊吹を苦しませることが目的ならば、夕島が自分達の身近な人間たちにその悪意を向ける可能性だってあるのだ。それが恐ろしい。