螺旋、再び 探偵奇談20
「弓道部の先輩の、神末伊吹さん」
瑞が紹介してくれる。
「森岡翔太です。初めまして」
聞けば翔太とは、保育園からずっと一緒なのだという。そういう友人達が、近所にたくさんいるというから羨ましい限りだ。翔太はからりとした明るい雰囲気を纏った青年だった。初対面とは思えないほど気さくに話しかけてくる。瑞にこんな友人がいるのか、と微笑ましい。
「へえ。ほんなら、大学見学に来はったんですね」
「うん。紫暮さんにいろいろアドバイスをもらおうと思って」
あわよくば勉強も見てもらえるかも、と淡い期待をしてきたのは秘密だ。なにせ紫暮は教え方が抜群にうまいのだ。瑞のクラスでは政治経済を受け持っている紫暮の授業は、丁寧でわかりやすかった。社会科の担当でありながら、級友らが他の科目について質問に行く場面も少なくない。
「瑞よかったなあ、楽しそうやんあっちの高校も」
「うん」
翔太はそれからも様々な話題で食卓を賑わせてくれるのだった。
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作品名:螺旋、再び 探偵奇談20 作家名:ひなた眞白