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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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瑞の部屋は意外にもシンプルで、ベッドや机などの家具と本棚CDデッキが置いてあるくらいだった。あまり物がない。高校生の自室といえばごちゃごちゃしてそうなものだが。そう言うと。

「俺あんま物いっぱいあるとこ落ち着かないから。大事なもんとか服とかは、じいちゃんちに持ってってあるしなあ」

と言って笑う。確かに弓道場の彼の棚は最低限の物しか置いていないし、いつもきちんと整頓されている。

(実家か…ここが瑞の原点というか、今のこいつを作り上げた場所なんだなあ)

伊吹はしみじみ思う。出会ったときには完成されていた瑞の性格や感性といったものは、この場所とあの家族のもとで育っていたのだ。そこに自分はいなかったことが、なんだか不思議だ。まだ二年目の付き合いなのに、やはりずっと昔からそばにいたような気持ちになるから。

「みーずー!」
「おっ」

窓の外から声が聞こえた。瑞が「たぶん、幼馴染です」と言って窓から身を乗り出す。瑞の背中越しに外を見下ろすと、広い玄関先に自転車に跨った青年が立っていて手を振っているのが見えた。

「帰ってきたんか。昨日おばちゃんに聞いてん。紫暮くんもおるんか?」
「おるで、ショウタ久しぶりやなあ」
「なんやあ、もっとはよに連絡してくれたらよかったのに。連休バイトいれてまったやん」
「前集まったとき、みんな部活の遠征とかあるってゆーとったから無理かなって」
「俺そんなんないもん。弱小サッカー部やし。後で遊びにいってもええ?」
「ええで。おいでーや。俺の先輩も来てんねん。紹介するわ」
「ほんなら俺今からバイトやし、夕方にでもお邪魔するわ」

ほななーと言い残し、自転車の彼は去って行った。伊吹のほうに向きなおった瑞は、伊吹がにやにや笑っているのを見てはっと口を押えた。

「うわ!俺いま素―出てた!?恥ずかしい!」

ばりばりの方言で話す瑞を見るのは初めてで、とても新鮮だった。決して悪い意味で笑っているわけではない。微笑ましいのだ。しかし瑞は赤くなっている。

「無理して隠すことないのに」
「えーでもなあ…」
「向こうでもたまに方言出てるよ」
「出てへんよ!」
「ほら」
「あ!」