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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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捨てる。これまでの感情のやりとりも、苦しんできたことも、全部。

「……」
「あれ、出来ないの?じゃあ瑞は助からないなあ。このまま衰弱して死ぬね」
「待て…!」
「待てない。今すぐ決めろ、この場でだ」
「……」
「瑞の命をとるか。瑞との思い出をとるか。究極の選択だな」

夕島は立ち上がると、伊吹の前まで歩いてくる。

「二つも同時に得られるなんて、ものすごく贅沢だ。いつからそんなに傲慢になったのかな?おまえたちなんて、命があるだけでも幸福だったはずなんだ。それなのに、自らの選択を悔いて、願いが叶ってもなお求めて、幾度も幾度も」

対峙する。見覚えのないその顔。一方的に向けられる悪意と憎悪に、伊吹は立ち尽くす。

「その過程が…何を犠牲にしてきたかを、考えもしないで」

犠牲…?

「ほら選べよ」

夕島の態度が徐々に苛立ちを帯びてくる。伊吹にはもう、迷う時間は残されていない。

「おまえの言う通りにするよ。だから瑞を助けてくれ。あいつが俺のことを全部忘れても構わないから」

命より大切なものなど存在しない。自分が覚えていられるなら、まだ救いがあるかもしれないと一瞬思った。だが忘れられることの方が残酷だという、これは夕島の究極の悪意なのだ。それでも伊吹は、瑞の命を取る。

「さあ、早くしろ!」

促す伊吹に対し、夕島が予想外の反応を見せた。