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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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ふさわしき代償



小さな社殿の中は、荒れ果てていた。本来ならば神が鎮座するであろうそこには、学生服の青年がいる。倒れた神棚の上に足を組んで、不遜な態度で笑っている。

「やっとゴールだね。遅いよ。待ちくたびれた」
「…きみは誰だ?」
「夕島柊也。ようこそ、神末伊吹先輩」

笑っているのに。それは強烈な憎しみを感じさせた。思わず後ずさる。怖い。

「瑞を助けに来たんでしょう?」
「…瑞からとった鈴を返せ。きみが瑞を眠らせているんだろう」

そうそう、と軽薄に笑う夕島。誰なのだ。何のためにこんなことをするのだ。

「瑞を返してほしい?」
「ああ」
「じゃあ、交換条件」

交換条件だと?ここにきて、まだすんなりとは返さないつもりらしい。卑劣な悪意に、伊吹は顔を歪めた。それを見て満足そうに頷くと、夕島は足を組み替えて勝ち誇ったように笑った。

「瑞の命は返すよ。その代わり、瑞の中から、おまえにまつわる記憶をすべて消す」

おまえ、という言い方に突き刺さるような伊吹への憎悪が滲んでいる。

「ようやく再会できて、一緒の時代で生きることが許されて、それはそれはお幸せなことだと思うんだけど。それを全~部捨ててくれる?」

そしたら瑞と鈴を返してやる。夕島はそう言って笑うのだった。