螺旋、再び 探偵奇談20
芝生らしい庭先。縁側から賑やかな声が聞こえてくる。老夫婦と、小さな男の子。男の子は嬉しそうに老女に抱かれている。
「柊也はいい子だねえ」
「もう少し大きくなったら、じいちゃんたちと一緒に海にいこうな」
孫と、祖父母。この後に待つ光景が、伊吹にはもうわかってしまう。嫌だ、もう観たくない。それなのに、瑞はやはりそこにも現れた。
「これも違う。だめだ」
「瑞、やめろ!」
や り な お し
塀を突き破って、乗用車が突っ込んでくる。悲鳴とブレーキ音。大きな音。伊吹は目を開けることが出来ない。また死の場面だ。
「瑞、もうやめてくれ…」
どうしてこんなことをするんだ。
「瑞だけのせいじゃないでしょう」
笑い声が聞こえ、伊吹は顔を上げた。そこは、見たこともない神社の境内だった。本殿への参道は、荒れ果てている。草が生え、石畳は割れている。灰色がより一層不気味さを煽る。
「おまえにも責任の一端があるんだ。贖えよ」
声は響く。本殿の社が、ギと音を立ててひらいた。此処まで来いと、そう言いたいのだろう。伊吹は震える足取りで、そこを目指した。
(何が起きているんだ。どうして俺に、あんなものを見せるんだ)
瑞を助けにきたはずなのだ。それなのに、あれではまるで、瑞が――
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作品名:螺旋、再び 探偵奇談20 作家名:ひなた眞白