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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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「拙僧が少しだけ、力を貸してやろう。この広い広い世界の中で、おぬしを呼ぶ二つの声が聞こえる。そこへ導いてやろう」
「え?」

男が錫杖を掲げ、地面にカンと突き刺すような仕草を見せた。その瞬間、壁紙が剥がれ落ちるようにして景気が一変した。伊吹は細く入り組んだ路地に立っていた。

声が聞こえる。誕生日の歌が聞こえる。伊吹はそこに向かって走り出した。誰かいる!
角を曲がると、窓を開け放った小さな平屋が見えて来た。そこから、楽し気な声が聞こえてくる。

「パパ、お誕生日おめでとう!」

洒落たリビングに、四人の家族が集まっている。両親と、まだ幼い二人の子ども。ケーキを囲む、誰が見ても幸福な光景だった。


や り な お し


「え?」

そんな声が聞こえたかと思うと、家が揺れて家族らが物のように吹き飛ぶ。地震だ。しかし伊吹にはその振動が伝わってこない。家族の悲鳴。幸福な光景が一転するのを、伊吹は茫然と眺めることしか出来ない。

倒れて来た柱が、父親の頭を直撃した。母親の悲鳴。血まみれの父親は、遠目に見てもこと切れているのがわかった。

一瞬にして吹き飛んだ幸福。伊吹は声も出せずにそれを見つめる。ひどい…。

その光景を、伊吹の隣で見ている者がいた。

「瑞…」

瑞が隣に立っている。