螺旋、再び 探偵奇談20
(誰が…?何が?)
そばにいてやることしか、伊吹には出来ない。朝になったら、颯馬に電話してみようか。
夜が来て眠る時間になっても、伊吹は瑞のそばを離れられなかった。
「何かあれば呼んで。きみもちゃんと休むんだよ」
伊吹の気持ちを察してくれたのか、紫暮はそう言い残して自室へ戻って行った。
静かな夜だ。何の音もしない。薄闇の中でじっとしているうちに、少しずつ睡魔がやってくる。気が付けば伊吹は、うとうとと船をこいでいた。
………
伊吹、と呼ばれた。
「…?」
肩を優しく揺すられる。目を開けると、月明かりに照らされた瑞の部屋の中で、伊吹は意外な人物と向かい合っていた。
「み」
静かに、と彼は人差し指を口元にあて、周辺の気配に耳をそばだてている。
「聞かれているかもしれん」
緊迫している雰囲気だったが、伊吹は目の前に現れた「瑞」を前に動揺を隠せなかった。伊吹の隣に片膝をつき、周囲の気配を伺っているのは、かつて別離を選んだもうひとりの瑞。
作品名:螺旋、再び 探偵奇談20 作家名:ひなた眞白