螺旋、再び 探偵奇談20
「この前言ったろ?すべての物に二つの顔があるって。今のは、おまえの大事なひとたちの、もう一つの顔だよ」
もう一つの顔…。
「かわいい郁ちゃんも、心の奥ではずるいおまえを疎んじている。そりゃあ、宮川先輩みたいな方が、男としても魅力的に決まってるよな」
そうなのかもしれない…。
「大好きな伊吹先輩も、他人に寄りかからないと立てないおまえの弱さを軽蔑してる。いつまで俺の人生に便乗してるんだって」
ああ、そうだったんだ…。
「帰ってくるなってさ。もういらないんだよ、おまえなんて」
夕島の声が耳に届く。この白黒の悪意に満ちた世界で、瑞は一人だ。
「もう…帰れない…」
耳を塞いで座り込む。もう伊吹にも、郁にも、合わせる顔がない。帰ったところで、もう、俺の居場所なんてないんだ。
「ここにいな?ずーっとさ」
.
作品名:螺旋、再び 探偵奇談20 作家名:ひなた眞白