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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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「お、瑞」

廊下の曲がり角で、伊吹に出くわす。彼もまた、色のない姿をしている。それでもその柔らかい笑みは、いつもと同じに瑞をほっとさせてくれる。

「先輩…帰ろう。ここは駄目だ」
「え?帰るってどこに?」
「これは夢なんだよ。夕島の世界だ。ここにいちゃ駄目だ。一緒に帰ろう!」

伊吹の腕を掴む。それを伊吹が、振り払った。これまでしたことのない、ぞんざいで冷たい動作で。まるでごみでも払うかのように。

「先輩…?」
「瑞、もう、帰って来なくていい」

耳を疑う言葉が、にこやかな伊吹から発せられる。

「もうおまえのことなんてどうでもいいんだ」

先輩は、こんなこと言わない。絶対言わない。

「大事じゃないし、好きでもない。自分の進路も決められない情けないやつ。俺はおまえの人生の保険じゃない。寄りかかられるのは迷惑だ」

先ほどの郁と同じように、伊吹は冷たい笑みを貼りつけたまま煙の様に消えてしまう。
後に残ったのは、立ち尽くす瑞と、色のない世界だけ。

「あーあ。かわいそうな瑞」

いつの間にか、背後に夕島が立っている。

「大好きなひとたちに拒否されちゃって」
「違う…あれは、偽物だ」
「偽物?違う違う。そんなもの存在するわけないじゃないか瑞」

夕島は視線を合わせて嬉しそうに話す。