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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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次に目を開けたとき、瑞は自宅ではなく見慣れた学校にいた。白黒の世界だ。色がない夢。白黒の学校。ここは、高校の教室。自分の席に座って、瑞は窓の外の赤い空を見上げている。色のない世界にあるたったひとつの赤。禍々しく、心をざわつかせる不吉なその色。

夕島に、鈴を取られた。あれを取り戻さないと、帰れない。瑞はそれを知っている。だが、この世界で自分の力が何一つ通用しないことも、瑞は知っている。ここは夕島の悪意の世界。何一つ太刀打ち出来ない。

(ここから、逃げないと…)

だるい身体を押して立ち上がる。そのとき教室の扉が開いて、女子生徒が入って来た。彼女もまた、白黒だった。

「一之瀬…」

何だか随分長いこと会っていない気がする…。柔らかく微笑んでいる彼女は、いつものように瑞のもとへ走ってくる。強烈な安堵と懐かしさに声が出せない。彼女がここにいることが、どれだけの救いか。瑞もまた彼女のもとへ駆け寄る。

「須丸くん!」

郁は息を切らせてそばに来ると、瑞を見上げて笑った。

「あたしね、須丸くんのことが大好き!」

屈託なく笑う彼女の言葉。それは瑞の心に温かく刺さるはずだったのに、瑞はそれを感じる前に、冷や水を浴びたような悪寒に晒された。

「ねえ、これで満足?」

途端に彼女の顔が、見たこともないくらい醜悪なものに変わった。侮蔑するような瞳が、瑞を睨みつけている。

「ズルい男。自分勝手。意気地なし。そんな男、大っ嫌い」

明確な拒絶。これは夢だ。違う。一之瀬が、こんなこと言うはずない。絶望して立ち尽くす瑞の目の前で、郁は煙のように消えてしまった。瑞は踵を返して教室を飛び出した。モノクロームの廊下を駆ける。

(でも、もしかしたら、そんなふうに、思ってた…?)

思い当たる節はいくつもある。彼女の好意に対し、自分は卑怯でずるい手段でしか向き合えていないのだ。