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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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微睡む影



紫暮の通う大学は、連休中だが開いていて、講義はないものの図書館で勉強している者やサークル活動や部活動に勤しんでいる者で賑やかだった。様々なところで本を読んだり談笑している学生を見かける。明るく自由で、そしてとても活気がある。広い広い校内は高校とは比べ物にならない。キャンパス内は小さな町のようになっており、学部ごとの棟の隙間を縫いながら歩いていると、一人では迷子になりそうだなと伊吹は思った。

大学の雰囲気を肌で味わうことが出来たことも勿論であるが、現役大学生の紫暮に相談に乗ってもらえることも伊吹には大きな収穫だった。いろんな質問に、紫暮は丁寧に答えてくれた。そんなことをしているうちにあっという間に日が暮れる。

「提出するものがあるから先生のところに行ってくるよ。少し待っていてくれる?」
「はい」

ベンチに座って、先ほど総務課で受け取った大学の資料に目を通す。紫暮が丁寧に解説してくれたおかげで、単位取得の制度や資格の取り方なんかを理解出来た。

(なんか、やっと現実味が帯びてきたなあ)

漠然としたイメージだった大学というものがようやく少し把握出来た気がする。来てよかったと思う。勉強に対してもポジティブに構えられそうだ。部活との両立が厳しいことに変わりはないのだが、それでも不安よりもやる気が勝っている。



「瑞と、離れちゃって大丈夫?」



突然背後から声を掛けられ、伊吹は振り返った。

「えっ?」

そこには誰の姿もない。離れた場所で、学生二人が談笑しながら歩いているだけだ。
いま、瑞と言ったか?その声は確かに、すぐ真後ろから聞こえたのだが。

なんだろう、ものすごく嫌な感じがする。

瑞と離れちゃって大丈夫?

その声色は、妙に嬉しそうな青年の声だった。どこか意地悪な、もっと言えば悪意のあるような色を含んでいた。