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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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瑞の座る場所から数メートル離れた水際に、立っている誰か…。瑞は前を向いたまま、そちらに意識をこらす。翔太は気づいていないようで、楽しそうな話が続いている。「それ」は瑞に視線を送っている。はっきりとわかる。

「そうそう、去年の夏に、ここで事故あってんで。だからたぶん、この夏も泳ぐのは禁止かもしれんわ」
「事故?」
「どっかから遊びに来てた大学生のグループが増水してんのに、中州でキャンプかなんかやっとって、流されてん。救急車来たって、母ちゃんゆうとった。そのあとどうなったかは俺らわからんのやけど」

事故。
水死?

脳裏にあの名前が浮かぶ。

「それで遊泳禁止になったんや。もしかしたら死んでもたんかなあ」

聞かずとも、調べずとも、その死んだ大学生の中にはいたのだとわかる。

夕島柊也が。

「怖いよなあ。あのへんとか結構深いから」

岩と岩の間。流れの強い場所で水が飛沫を上げているあたりを、翔太が指さす。視界の隅で、「それ」が静かに揺らめいたのがわかった。

「俺ら子どもだけでよく遊んだけど、いま思えば危ないわなあ」

飛沫の合間に、何か白いものがちらちらと見え隠れしている。何だろう…ゴミ袋でも挟まっているのだろうか。普段なら、そんなもの別段気にならない。それなのにいまは、それから目が逸らせない。誘われるように、視線がそこを向く。視界の隅で、「それ」が溶けるように崩れて水面に吸い込まれていく。

その瞬間。

周囲から音が消える。
隣にいたはずの翔太の存在も消える。
世界から色が消える。
川の流れが止まり、その白いものがよく見える。