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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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「中学んとき、おまえ先輩にやっかまれたりしてたから心配やったけど、安心したわ」
「あのひと精神的にめちゃくちゃ大人だから。中学んときのちっちぇー先輩らとは比べもんにならんよ」

小さなやっかみやくだらない流言なんて、別に怖くはなかったし、暇人なんだなくらいにしか思っていなかった。伊吹に出会って、こんな人もいるんだなと感心したのだ。他者のために思いを尽くすことを厭わない。すごい人だと、しみじみ思う。尊敬しているし、こんな風になりたいと憧れる。

「よかった。楽しくやっとるみたいで。みんな瑞に会いたがっとるから、また夏休みとか戻ってきてや」
「うん」

自分は幸せ者だと思う。居場所がこんなにたくさんあるのだから。祖父の元。家族の元。伊吹の元。そしてここにも。何だか、これまで当たり前だと思っていたことはものすごく恵まれていることなのだと感じさせられてばかりだ。いろいろな人に支えられて、自分は生きている。あんなに疎ましかった家族(主に兄)にも、感謝しなくてはいけないのだ。

「暑くなってきたなあ」
「川のほう行ってみるか」

神社の裏手の斜面を下ると、大きな川が流れている。魚を釣ったり泳いだり、中州でバーベキューをしたり、ここでもよく遊んだ。山からの綺麗な水は濁ることのない清流だ。手を浸すとひんやりとした心地よい冷たさが皮膚を撫でた。

「懐かしいなあ。この川」
「瑞が浮輪流して、みんなでかなり下流までおっかけたよな」
「あったあった!」
「紫暮くんにめっちゃ怒られたよな~」

大きな石の上に腰掛けサンダルの足を川に浸しながら、思い出話に花が咲く。日差しの強さも、川の流れる涼し気な音に緩んでいるような感覚で、心地よかった。だからこそ、その感覚が体を走ったとき、瑞は驚嘆せずにいられなかった。

「…」

なんの予兆もなく、ぞくりと背が粟立った。それは視界の端に、何か里山の景色とはかけ離れた物が映り込んだからだ。